リングにかけろ

by 車田 正美 1979年作品
リングにかけろ(7)  リングにかけろといえば、車田正美の出世作にて最高傑作である。一般的には大ヒットした「聖闘士星矢」を代表作とする向きが強いが、作品としての完成度は「リンかけ」が上だと思う。
 連載開始直後に出会った永遠のライバルとの世界タイトルマッチで終える、というかなりベタなパターンではあるが、あの週刊少年ジャンプ誌上で王道プロットを描ききれたのいうのは奇跡に近い。人気が無ければ構想10年の大作もわずか10週間で終了するし、人気がありすぎても作者の思いとは関係なくダラダラと連載を引き延ばされる。作者が完了したいところジャストで物語を完結でき、しかもそれが巻頭カラーだったというのは、後にも先にも「リンかけ」だけだ。
 この漫画が大ブレークするきっかけとなったのは、なんといっても「ブーメランフック」の登場である。作者の車田正美氏自身もブーメランフック誕生は記念すべき稿だったと、ジャンプコミックス8巻で述べている。オリジナルジャンプコミックスの7巻までは真面目(?)なボクシング漫画だった。ここまでのストーリーも個人的には「阿修羅編」等より何10倍も面白いと思うのだが、ブーメランフックにより「あしたのジョー」や「がんばれ元気」とは全く異なる世界に突入しながらも、かろうじて現実味を残していた「アメリカJr.編」が一番面白かった。オリジナルジャンプコミックスでは10巻であるが、現在発行されている復刻版コミックスでは7巻、8巻がここにあたる。
 このころの車田正美は、一番丁寧で綺麗な絵を描いていた時期である。後に「ふたりのダービー」でデビューする田中つかさがアシスタントとして活躍していたこともあってか、バックの観客やアナウンサー等も非常に丁寧な絵柄である。影道編途中から「神輪会」というアシスタント組織が結成され、車田氏の絵柄もより男らしく力強いものへと変化していくのであるが。
「パワーリスト」(復刻版ではドラゴンリストとなっている。商標の関係で変更したのだろうか?)や、影道編で登場する「カイザーナックル」等、少年の心をくすぐるアイテムを登場させたり、「世界大会編」以降のカタルシスに満ちた一週完結の展開に当時小学生だった私達は熱狂した。
 もしあなたがこの漫画に興味を持ったなら、ぜひ剣崎順のセリフを堪能してもらいたい。「おめぇケツの穴は洗ってきたか?」、「女をものにするのに金持ちも貧乏人もあるか」(世界タイトルマッチ直前の石松との喧嘩)、「俺はこの女とは結婚しない」(婚約発表パーティーで)、「俺はこの星が燃え尽きようとも菊を守り抜く」(ギリシア12神との決戦時)等など剣崎節ともいえるセリフが至るところで炸裂する。初めはいじめっ子キャラだったのだが、スーパースターとして(俺はスーパースターだというセリフもあったような)成長するに従って胸のすくようなセリフを連発する。
 そんな剣崎の息子が主人公となった「リングにかけろ2」が現在連載中である。久々の普通の人間が主人公の車田漫画であるが、「リンかけ」テイストは失われていない。
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