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アルジャーノンに花束を

by ダニエル キイス 1966年作品
Flowers for Algernon  Daniel Keyes
 約半世紀前に書かれたこの作品は、最近もTVドラマ化されていることからもわかる通り、古さを全く感じさせない傑作である。
 ダニエル・キイスという作家は1990年代半ばに「五番目のサリー」や「24人のビリーミリガン」。等の多重人格をテーマにした作品で一大ブームを作り上げたが、やはりファンの間では「アルジャーノン」を最高傑作として支持する声が多い。
 ダニエル・キイスも凄いのだが、翻訳の小尾 芙佐氏も素晴らしい。知能障害者の日記という形式で進むため、特に知能が低い時期に書かれた日記の、文法的な間違いやそれが徐々に正しくなっていき、徐々に漢字の使用度が増えていく、という文体は英語はもとより日本語に精通している人間にしかできない仕事である。
 私は原著Flowers for Algernonも読んでみたのだが、子供にありがちな英語のスペルミスや文法ミスが多く(もちろんダニエル・キイスの力量が故の技なのだが)非常に読むのに苦労した。と同時に、日本語翻訳者の仕事のもの凄さにも感嘆してしまった。
 ストーリーのプロットも素晴らしいのだが、作家としての文章力も特筆に価する凄い作家である。そして、感動のラスト2行、おそらく作者が書きたかったのはこれなのではないだろうか。そして、読者もこの2行にたどり着くために読みにくい部分を乗り越えて読み進めるのである。

 ちなみにこの作品は映画化されている。公開当時の邦題は「まごころを君に」というものだが、エヴァンゲリオン映画版のタイトルはおそらくこの邦題から拝借したものだと思う。
 氷室京介がBOOWY解散後に出した、初のソロアルバムFLOWERS FOR ALGERNONは、この小説にインスパイアされたものである。「DEAR ALGERNON、ただの屑でいいさ〜」という歌詞は、小説の内容と重なって心に染みる。
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