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三国志 四の巻 列肆の星

by 北方謙三 2001年作品
三国志 四の巻 列肆の星  この巻のハイライトは、曹操と袁紹の決戦「官渡の戦い」である。宦官と名門というそれぞれの血筋によるが、この二人の力関係の象徴でもあった。それを逆転すべく不利な状況でも果敢に戦う男、曹操と全ての決着を付け乱世に終止符を打つために動く袁紹。それぞれの存在意義をかけた戦いは結果がわかっていながらもわくわくする。
 歴史小説は絶対に変えることの出来ない史実に基づいており、読者もともすれば予定調和的な予備知識を持って接してしまいがちである。結果がわかっている物語をどのように読ませるか、が数ある三国志小説での命題かと思うが、この点で北方氏は実にうまい。
 寝返りや裏切りという事実が変えられないのであれば、その理由や経緯をいかに脚色し更に物語全体に矛盾が起きないようにする。こういった手法で、非常に有名なキャラクターに新たな命を与えるように、北方三国志は進む。 顕著なのは呂布の書かれ方なのだが、この三国志では劉備が結構したたかで計算高い男として書かれている。
 曹操も主人公のライバルというよりは、全能の英雄として扱われているのだがこの巻では姑息な一面も見せている。本文では曹操ではなく荀�ケが手を汚したということになっているが、「小覇王」孫策を暗殺している。孫策は情事の果てにあっけなく殺されてしまうのだが、北方らしく手の込んだ、そして英雄らしい死に方をしている。
呉の孫堅、孫策、そして周兪が健在であったなら天下がどのように動いたのかという楽しい想像は、三国志ファンであれば少なからず行ったことがあるのではないかと思うが、史実は冷たく志半ばにして孫堅、孫策の命を奪う。
 幾多の絶体絶命のピンチをしのぎながら大きくなっていった曹操がやはり主人公なのだろうか。
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