2004年8月 アーカイブ
シングルカットされた#2 "Why Can't This Be Love?"をはじめ、前作"1984"で開拓したポップ路線を、素晴らしい歌唱力を持つロックボーカリストの声を最大限に活用することで更に広げた。
Van Halenの特徴であるファンキーなリズムギターと、"Jump"で聴かせてくれたシンセサイザーによるソフトなサウンドが見事に融合し、Dave Ree Rothでは歌いこなせなかった曲のアイデアを全て具現化した隙のない名盤である。
当時はDave Ree Roth を惜しむ声も少なくは無かったが、私的には代わりにSammy Hagerが加入するということで、アルバムが発表される前からかなり期待をしていた。
実は初めて"Why Can't This Be Love?"を聴いた時はVan Halenの曲としてはかなり違和感を覚えた。この曲が非常に良い曲であることには疑いはなかったが、所謂ヘヴィ・メタル/ハード・ロックとしては過去に例がないような斬新なサウンドがその違和感の原因であったことに気づくまでは暫くの時間を要した。
そんな違和感もアルバムの#4 "Dreams"を聴いた時に全て吹き飛ばされてしまった。
この曲はエディ・ヴァン・ヘイレンの作曲能力とサミー・ヘイガーのメロディ&歌唱力、そしてコンパクトながらいかにもエディというギターソロもあって正にヴァン・ヘイレンの代表曲というにふさわしい超名曲だ。
80年代のロックが好きであるにも関わらず、この曲を聴いたことがないのであれば、この曲を聴くためだけにCDを買っても損はしない。むしろお釣りがくる位。必聴度200%。
一説には、ブラック・サバスを脱退し心機一転アメリカでソロ活動を始めたオジー・オズボーンの成功が元祖L.A.メタルという声もあるし、ヴァン・ヘイレンは70年代から売れていたという声もあるだろう。
しかし、#2 JUMPの大ヒットこそがこの音楽ジャンルを一躍メインストリームへ押し上げたという事実については否定はできないと思う。
結果としてDave Ree Roth在籍時最後の作品となったのだが、このアルバムは第1期最高のセールスを記録した正にバンドを代表する作品にもなったのである。
当時は日本中のキーボードプレーヤーがコピーしたのではないかという非常に有名なシンセのイントロが印象的な"JUMP"だけでなく、現在も代表曲としてライブ演奏される"Panama"、アメリカ人の間違った日本観も垣間見えるビデオクリップが楽しい"Hot for a Teacher"、豪快かつテクニカルな、ギター小僧が固唾を呑む素晴らしいギタープレイが光る"Top Jimmy"等、楽曲も粒揃いだ。
前作の"Diver Down"では日本でも有名で小シングルヒットした"Oh! Pretty woman"を初めとするカバー曲が多かったのだが、ソングライターEdward Van Halen は溜まりに溜まったアイデアを一気に放出したかのようで、素晴らしいオリジナル曲の数々が楽しめる。
(実はSammy Hager を迎えた次作ではさらにバラエティに富んだ楽曲が揃うので、実はこの1984が全開ではなかったという結果論にはなってしまうのだが。)
20年前の作品であるが、今聴いても血が匂い立つ思い出の作品。いや、特にエディのギターリフアレンジはギターを弾く者は一度は聞いておくのが義務だと思う。