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アンヴィル!夢を諦めきれない男たち::Anvil! The Story of Anvil

by ANVIL 2009年作品
Anvil! The Story of Anvil  渋谷駅の宣伝ポスターに"Anvil"の文字があるのを初めて見たとき、それが”あの”アンヴィルとは全く想像もできなかった。
 スーパーロックフェスティバル'84という当時ではかなりめずらしい野外フェス形式での、全国の野球場をツアーするという大規模なイベントがあった。
私は地元のナゴヤ球場(ドームではない)でリアルタイムにこの祭典を体験している。当時、授業中は漫画を描いているかヘビメタを口ずさんでいるかのどちらかと評された、ヘビメタギター高校生にとっては国民的行事級の出来事である。
 
 スーパーロックフェスティバル'84のラインアップは以下の通り。
  1. ANVIL
  2. BON JOVI
  3. SCORPIONS
  4. MICHEAL SCHENKER GROUP
  5. WHITESNAKE
 このメンツは今となっては招集不可能だろう。特に当時は前座だったBON JOVIがこれほどの大スターになるとは予想もつかなかった。
既にBigだったSCORPOINS、WHITESNAKEもこの後に全世界でのメタルブームに乗っかってさらに大ブレークした。MSGも日本では順調にセールスをのばした。
ANVILだけはその後名前を聞くことはなかった。私にとっては。
 ANVILという、珍しい響きのバンド名が頭の片隅には残っていた。が、80年台のメタルブームにも乗ることができなかったANVILなんていうバンドは90年代のグランジブームによって完全に消えうせたと思っていた。
それが、まさか今になって映画の題材になるとは全く思いもよらない事態である。しかも30年間売れないバンドを続けた男達のドキュメンタリーという、音楽と同じく商業性の全く欠けた題材だ。
この時点で既に感涙ものなのだが、内容も切ない作品だった。
 私は劇場で鑑賞したのだが、改めてANVILの音を大音量で聞くと実に格好良いものということを認識した。
メタリカやガンズのメンバーがANVILを絶賛している理由が少し理解できた気になった。
典型的なロック馬鹿のアティチュードを徹底するボーカルのリップスと、これまたある意味典型的な芸術家肌のドラマー、ロブの生の姿を堪能できる。私も音楽家の端くれとして共感できる言葉も多数あった。
  • やりたいことはやり尽くしてきた。後悔はない。
  • 自分たちのサウンドを追求する。それが全て。
ただ、私は絶対にリップスのような人間とは一緒に仕事はできない。特に音楽は。普段は好き勝手に物を言い、我が儘放題なくせに、電話セールスの仕事では3日間で一つも売ることができなかったダメさかげんや、自分は癇癪持ちだから仕方が無い、理解して受け止めてくれ等自分勝手にも程がある。
そんな人間でも、いやだからこそ廻りで支える人間や信じる人間がいてくれるのかも知れないが。
 少しネタバレになってしまうが、映画のクライマックスが日本でのライブだったのは日本人としては誇りに思う。
ロックのショウビジネスに関しては日本人の勤勉さや誠実さは本当に世界に誇るべきものであるし、ANVILにとって人生のクライマックスが日本での体験だと思うと、不覚にも目頭が熱くなってしまった。
 メタル嫌いな人にこそ見て貰いたい。メタルファンならwatch or die!
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