トップ >映画評論瓦版:DVD批評 >お笑い芸人 > オレたちひょうきん族 THE DVD 1985 :: ビートたけし 明石家さんま

オレたちひょうきん族 THE DVD 1985 :: ビートたけし 明石家さんま

by ビートたけし 明石屋さんま 2003年作品
オレたちひょうきん族  何を隠そう私はビートたけしファンである。中高、大学の10年間ビートたけしのオールナイト・ニッポンと共に木曜深夜を過ごした。学校帰りの電車の中で、たけしのオールナイト・ニッポンの話で盛り上がったというくだらない理由から高校来の親友も出来た。ビートたけしは確実に私の青春の一部だった。と書いてみると、たけし氏には失礼だが、振り返れば私の青春は実にくだらないものだったということをあらためて確認してしまった。
 そのたけしがメインをはり、「8時だよ!全員集合」の裏番組というお笑い番組としては最大のチャレンジプロジェクト「オレたちひょうきん族」がDVD化された。1980年の漫才ブームを牽引した「THE MANZAI」を造り上げたスタッフによるこの番組は、「THE MANZAI」とは全く異なる新しい手法を生み出し、その後現在まで続くバラエティ番組の基本形をつくりだした。
確か第1回か2回の放送だったと思うが、ドラマパロディのコントで仰々しく「続く」というテロップが流れた直後に「続きです」というナレーションを入れるというものがあった。欽ちゃんやドリフに代表される「舞台」もしくは「ライブ」のコントがテレビのお笑い番組でも主流(というよりはこれしかなかった)だった時代に、テレビの手法を遊び尽くすことでテレビでしか出来ないお笑いを提供してくれたのだ。
 これは1970年代後半のギャグマンガのセンスとも微妙にからみあっていると思う。「すすめ!パイレーツ」、「マカロニほうれん荘」、「がきデカ」等のシュールかつスラップスティックなセンスをうまく取り入れることで、「ひょうきん族」はこういったマンガ世代の少年少女をキャッチしたのではないだろうか。くしくも「すすめ!パイレーツ」コミックスの巻末コメントで当時人気絶頂だったB&Bがこんなコメントを残している。「漫画は何でも出来てうらやましい。僕らもステージで虎や竜を一瞬で引っ張り出せたら拍手喝采ですわ」。
 さすがにステージでは無理だったが(イリュージョニストは実現しているが)、テレビの中では可能だったのだ。
 これをリアルタイムで見ていた私はテレビの前で狂喜乱舞したものだ。ツービートや春やすこ・けいこに代表される毒舌漫才に慣れたのもあり、普段友達との会話もシニカルで人をおちょくったものになっていたので、笑いのポイントがピタリとはまる番組が始まったということが本当に嬉しかったのだ。
また、ツービートでは、自身のラジオほどの面白さを出せなかったビートたけしが、明石屋さんまという素晴らしいコントパートナーを見つけ、非常に生き生きと話しているのも嬉しかった。さんまも「THE MANZAI」において果敢にも一人漫談を披露していたが、現在の彼とは比較にならない程面白くなかった。しかし、彼もたけしというパートナーを得て「小林繁」の物まねタレントから一気にお笑いビッグ3へと飛躍する。もっとも彼の場合は「笑っていいとも」でタモリというパートナーを得たことも大きいが。
 TAKEチャンマンでは「ブラックデビル」「あみだばばあ」も良かったが、なんといってもこの「オレたちひょうきん族 THE DVD 1985」に登場する「シットルケ」が最高だった。紳介や鶴太郎も活き活きしており、番組としても最盛期を迎えている。他のコーナーでも松尾伴内やMr.オクレなどマニアックな芸人を小ブレイクさせたりと、新たなお笑い登竜門としての機能もあったのではなかろうか。
 ひょうきん族以降、とんえるずやダウンタウン、ウッチャンナンチャンがこの手法を受け継ぎ、現在も新たな芸人(SMAPも含む)が同じ手法で笑いを提供している。一種の伝統芸になりつつあるが、20年も同じ笑いを見ているとさすがに食傷してしまう。新しい形の笑いを提供できる天才の出現を切望する。
| コメント(0)| トラックバック(0)

トラックバック(0)

この記事に対するトラックバックURL: http://www.ymzoo.com/_mt/mt-tb.cgi/68

コメントする

最新コメント

    最新トラックバック