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無罪モラトリアム :: 椎名 林檎

by 椎名林檎 1999年作品
無罪モラトリアム  このデビューアルバムを初めて聴いたのは、私がまだ米国に住んでいたときだった。
 グランジは米国ではHIPな存在だったが、その系統の音楽はあまり好きではなかった。しかし、このアルバムを聴いた時、自分の予想を超えた「日本語歌詞」のグランジの凄さに驚いた。
 グランジ/オルタナというカテゴライズについての反論はあるかと思うが、自分の中では椎名林檎サウンドはグランジとして響き、同時にその巧みな日本語歌詞による「女の情念」の表現には「中島みゆき」と同じ匂いを感じた。
 一般にデビューアルバム特有の、やや空回りにも似た「勢い」が情念の表現に拍車をかけており,言葉廻しの技術ではまだまだ上をいくはずの中島みゆきと同レベルでの迫力を産んだ。
 更にこれもデビューアルバム故か、自分respectアーティストへのオマージュがいたるところで見受けられる。Blanky Jet CityやNirvana等、歌詞に直接的にあらわれるだけでなく、2ndアルバム以降の楽曲と比較すると英語詞が多いのもそのひとつである。
尊敬するアーティストからの影響を照れることなく露にすることで、新宿系アーティストというくくりだけではなく、自分はもっと広く深い音楽への造詣があるのだと主張しているようにも思える。
 本レビューを書きながら改めてこのアルバムを聴いてみたが、未だに何度聴いても飽きがこない。
 1曲目「正しい街」のイントロは今でも新鮮に響く。
 結婚、出産、離婚という経験の後、ついにイメチェンを図った最新の椎名林檎のアーティストとしてのあり方はDVD作品「Electric Mole」で確認してみたい。

  1. 正しい街

  2.  夢を追って故郷から飛び出し、その見返りに受けた罰.. 誰もが少なからず共感できる歌詞と、最先端と懐古趣味を同居させたようなサウンド。アルバム全編に言えることだが、ベースアレンジが最高だ。
  3. 歌舞伎町の女王

  4.  サイケデリックなサウンドに完全なフィクションという歌詞が乗るシングル曲。「新宿系」という冠を決定付けた楽曲。フィクションでありながら、妙なリアリティがあるのは椎名林檎の歌唱力ならではか。転調が美しい。
  5. 丸の内サディスティック

  6.  さえきけんぞうにも通ずる、意味の無い言葉遊びのセンスがあふれる佳曲。退廃的なサウンドも私好み。
  7. 幸福論(悦楽編)

  8.  デビューシングルよりもこのバージョンを先に聴いたのも原因かも知れないが、こちらのバージョンの方がロックしており私の好みである。イントロのギターがメタルっぽくて良い。熱い健気さを表現するのにピッタリだと思う。
  9. 茜さす 帰路照らされど・・・

  10.  Jazzyなアレンジがお洒落な曲。「ファズの効いたベースが走る」という歌詞があるが、その後で聴こえるワウの効いたギターがかっこいい。英語のサビにこだわりを感じる。
  11. シドと白昼夢

  12.  詞も面白いがサウンドも面白い。当時の最先端アレンジだと思うが、今聴いても古臭いとは思わない。特にサビのベースアレンジが素晴らしい。
  13. 積木遊び

  14.  これはプロモーションビデオが秀逸だった。日本的なサウンドと、はき捨てるような歌唱法による非常にロック的な要素がからみあい、更に独自の世界を醸しだす映像が最高である。
  15. ここでキスして。

  16.  まさに「女の情念」が感じられる歌詞。男の私でもこの曲を聴くと涙がこぼれる。どこまでが椎名林檎本人の体験と重なるのかわからないが、その歌詞とメロディは心に突き刺さる。
  17. 同じ夜

  18.  これはバラードと言ってよいのか?悲しげなバイオリンが実は非常にロックギター的なフレーズを奏でているのが面白い。特にエンディングはギターと絡みながらも、それよりもギター的な調べにセンスを感じる。
  19. 警告

  20.  グランジにカテゴライズされるサウンドなのだが、「荒く」はなく計算しつくされたアレンジがカッコいい。意識的にやっていることだと思うが、70年代のニューロック(死語)特にCREAMあたりを彷彿させる。(* CREAMとはあのEric Claptonが在籍した伝説的なバンド)
  21. モルヒネ

  22.  シュールな歌詞と、ほんわかしたアレンジが最初に耳につくが、突き抜けるサビのメロディがこの曲を至高のものにしている。アルバムラストにふさわしく、再度1曲目から聴きたくさせる「麻薬的」な曲。椎名林檎の全楽曲中、一番好きな曲かも知れない。
 「幸福論」ではひたすら好きな男を理解し、それを守る女を詠い、「ここでキスして」では「愛しているから私を理解して」と正反対の情念を詠う。いずれにしても、こんな女性に想われたら私はとても耐えられないと思う。聴き手にある種の恐怖感を与えられる音楽はやはり素晴らしいものだと思う
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コメント(2)
名無し :2003年11月13日 17:37

椎名林檎でググッたらThe Off Spring のページが表示されました。

みかん :2004年4月13日 17:51

椎名林檎としてはアルバム3枚で止めるって言ってなかったか?
カバーとかを省いても、既に3枚出している。
次は椎名蜜柑になるのか?

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