狂った太陽 :: バクチク
by BUCK-TICK 1991年作品
バンドのパブリックイメージを決定づける、つまり熱心なファン以外の大衆が「"BUCK-TICK"といえばああいうかんじね。」というサウンドの基盤を確立した記念碑的作品。
多くのバンドに影響を与えることになり、未だにカラオケでは筆者の定番ソングとなっている"スピード"、疾走感あふれる"Machine"、星野英彦 入魂の美しすぎるバラード"Jupiter"、そしてラストのゴシックナンバー"太陽ニ殺サレタ"まで隙のない完璧な流れで珠玉の楽曲がならぶ。
初シングル"Just One More Kiss"のヒットでブレイクし、バンドが上り調子の時にリーダーの"今井 寿"が LSD 服用の罪で逮捕、バンドの活動停止というショッキングな出来事があった。
その禊の意味も持った、復活アルバムが"悪の華"、続くアルバムの一曲目が"スピード"(当時話題になっていたドラッグのスラング名)と、挑発的かつ刺激的なタイトルをつけるセンスには脱帽する。
ボーカルの櫻井敦司は活動停止中に随分と本を読みまくったらしく、そのときハマッたボードレール等からの引用がたまたまこのような結果になったというのが実際のところらしいが。
そんな櫻井敦司がついにソロ活動を始めた。自分で作曲をしない人なので、誰が曲を書くのかがとても気になっていたが、非常にバラエティに富んだ作家が参加しているようだ。"愛の惑星"。凄いタイトルだ。
デビュー以来メンバーチェンジなしで活動してきたバンドなので解散の前触れということは決して無いはず。ソロも成功して欲しいね。
狂った太陽
楽曲紹介スピード
サビの"女の子、男の子"という歌詞が、新機軸でありその後の作詞方法をも確立したのではないだろうか。この跳ねたリズムが他のバンドへもかなりの影響を与え、一時期日本のロックバンドのリズムパターンがこればっかりになったことがある。シングル曲らしく、キャッチーで勢いのある良い曲。シングルバージョンではイントロが微妙に違う。PVでマラカスを持って踊りまくる櫻井敦司が格好よい。
MACHINE
何でも敦司が車を買ったのでこの歌詞が産まれたらしい。車といっても白いポルシェで夜中に首都高速を走りまわっていたとか。このスピード感はポルシェに乗らないと産み出せないのかな。。
MY FUNNY VALENTINE
こういった曲は今井寿にか作れないと思う。New Waveっぽいけどメロディが美しい。
変身(REBORN)
タイトルからしてカフカの小説からの影響がうかがえる。初期の曲調に近いがやはり、演奏力が向上しているのでキレがある。
エンジェルフィッシュ
初期のROMANESQUE以来、今井お得意のパターン。昭和歌謡曲と変態チックなサウンドが絡まったBuck-Tickならではのナンバー。
JUPITER
美しく悲しいバラードだ。このアルバムの製作直前に敦司のお母さんがお亡くなりになったことがこの歌のテーマだ。"さよなら、悲しかった笑顔"というのはヤンキー時代に学校や警察に呼び出されたお母さんの姿をあらわしているとのこと。この切なさや悲しみの説得力は原体験に基づいたものだからなのだろう。
さくら
タイトルほどほのぼのした曲ではなく、どちらかといえば8分で刻むリフに緊張感がある。サビで一瞬盛り上がって、渋いメロディで落とすところはさすが。
Brain,Whisper,Head,Hate is noise
これも、今井必殺のパターンというか、こういう曲がないとBuck Tickではない。今井のソロはもっとこの路線を極めるかと思っていたが意外にポップだった。
MAD
音楽評論家の市川哲史曰く"櫻井敦司美学の到達点"。"僕は狂っている"、"そして眠りにつく"と櫻井ゴシックの集大成である。サウンドはゴシックというよりはサイバーニューウェーブっぽい。
地下室のメロディー
全てカタカナで書かれた歌詞がサイバーっぽい。ハードコア的なスピードチューンで私的には大好きな曲。
太陽ニ殺サレタ
これはおそらくカミュの"異邦人"にインスパイアされた歌詞だろう。異邦人では"太陽があまりにも黄色かったから人を殺した"のであるが、こちらは逆に"太陽に殺された"である。前作"悪の華"のラスト"Kiss me good bye"にも通ずるゴシックな感じがたまらない。ちなみに"Kiss me good bye"のビデオは無茶苦茶かっこよいので未見の人は是非一度見ていただくことをおすすめする。
トラックバック(0)
この記事に対するトラックバックURL: http://www.ymzoo.com/_mt/mt-tb.cgi/18
コメントする